モントリヒト城の吸血鬼①～ヴァンパイアの花嫁～

足早に森の中へ入る。

本来なら吸血鬼を
拒むはずの森の結界は、
沙羅の髪の毛を
編んで作った
ブレスレットの
おかげで
ノークスを
受け入れた。

ドアの前に立ち、
中の気配を探る。

中に人の気配を
認めてから、
ノックする。

カチャリと、
音がして、
見慣れた色の髪と
瞳がノークスの
視界に入った。

「…。」

「…。」

大きな瞳と
視線がぶつかる。

僅かに瞳が
赤らんでいるのは、
やはりノークスの
せいで泣いた
からだろうか。

「…沙羅…。」

どうにか名前を
呟いたが、続きの
言葉が出てこない。

ついさっきまで
考えていた
第一声を見失い、
何か言わなければと
焦るが、謝罪の
言葉さえ思いつかない。