モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
「…朔夜様。
こっち。入って。」

言い淀むノークスに
沙羅が声をかけた。

腕をつかまれ、
居間へ通される。

目が赤いこと以外は
いつも通りの
沙羅の様子に、
ひとまずホッとした。

「あのね、パイを焼いたの。」

「…。パイ、ですか…?」

「…なかなおり、したくて。」

そう言って通された部屋の
テーブルには、今さっき
出来上がったばかりで
あろうかぐわしい香りの
ミートパイが上がっていた。

「…火…火を
起こせないのに、
どうやって…。」

「凍夜お義兄さまに、
手伝ってもらったの。」

「…凍夜がここに
来たのですか?」

「うん。それで、
朔夜様はミートパイが
好きだって教えて
もらったの。」

「…。」
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