モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
窮地の狂気
―決して、許すものか。
地主は、高熱と身体の
痛みでふらつく足を
必死に動かした。
ようやく、長年の
恨みがはらせると
思ったのに。
なぜ、こうもうまく
事が運ばない。
なぜ、自身がこのような
窮地に立たされている。
数日前、片手を失い
血まみれで屋敷に戻った
吸血鬼、シャディンは
言った。
「姫乃を差し出すか、
お前の命を差し出すか、
好きな方を選べ。」
そうして、あろうことか、
あの化け物は地主に
無理やり己の血を
飲ませたのだ。
「姫乃を連れてきたら、
解毒をしてやる。」
そう言い残して、
シャディンは
去って行った。