モントリヒト城の吸血鬼①～ヴァンパイアの花嫁～

「小娘、貴様…！」

「早くしなさい！！
妹の命がかかってる
ときに躊躇するほど、
甘くはないわ！」

銃口を、力いっぱい
地主のこめかみに
押し付ける。

銃弾が入っていない
など考えつきも
しない地主は、
真っ青になって
森の前の喰血鬼たちを
下がらせた。

姫乃は地主を盾に、
開けた道を慎重に後ずさる。

体勢を整えた
使用人たちが、
地主より自分たちの
命を優先して
向かってくるのを
見るや、姫乃は
地主を突き飛ばし、
燃え盛る森へと
ためらうことなく
足を踏み入れた。

「くそ、貴様ら、
使用人の分際で
よくも主人を！
ええい、とにかく、
追え、喰血鬼ども！
お前たちの主が
のどから手が出るほど
欲しがっている娘だ、
けして逃がっ…！？」

声を荒げ、
喰血鬼をけしかける
地主の耳に何かが
倒れ崩れる音が届いた。