モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
「話はあとにしましょう。
とにかく、森から
出ないと…。
走れるわね?」

「…はい。大丈夫。」

罪悪感で泣きたくなるのを
こらえ、しっかりとうなずく。

黎明を抱きかかえ、
姫乃に手を引かれ走り出すと、
先ほどと同じように
幼い頃の記憶が脳裏をよぎった。

怖くて、姫乃と繋いだ
手に力を込める。

応えるように姫乃も
沙羅の手を強く握り返した。


炎が、怖い。


でも。

姫乃が、自分の為に
この猛火の中、助けに
来てくれたことを思うと、
激しい罪悪感と深い安堵で、
怖さが隠れていく。
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