モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
「…お姉さま、ありがとう。
…お姉さま…?」

自分に覆いかぶさる
姫乃の、返事がない。

「お姉さま…!?
お姉さま、どうしたの!?
大丈夫、お姉さま!」

「…。…沙羅…
怪我、してないわね…?」

ようやく返ってきた
返事はあまりに苦しそうで、
それだけで沙羅は姉に
何かあったのだと気付いた。

「お姉さま、どう…。」

「沙羅…あなた、先に
行きなさい。」

「お姉さま!?」

姉の下から這い出して、
沙羅は言葉を失った。

「…。」

「ちょっと、動ける
ようになるのに、
時間がかかりそうだわ…。」

「お、お姉さま…。
そんな…。」

「沙羅、早く行って…
そうだわ、誰か、人を
呼んできて、くれないかしら。
男の人がいいわね…
女の人の力じゃ、
これをどけるのは、
無理だから。」
< 650 / 726 >

この作品をシェア

pagetop