モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
凍夜の凶刃からどうにか
生き伸びたのだろうが、
その姿から察するに
深手を負っているのは
明らかだった。

凍夜が獲物を見過ごすという
滅多にない落ち度は、
やはり姫乃の命がかかって
気が急いたためか。

「よこせ…その娘さえいれば、
姫乃を捕まえられるのだ…!」

「!」

「早く…早くしないと…
解毒を…姫乃を…
差し出さなければ…。」

目を血走らせ、
うわ言のように
口走る地主を
唖然として見ていた
ノークスは、ふと、
気がついた。

「…シャディンに、
血を飲まされたのか…!」

「…早く…よこせぇぇぇ!」

「ぐっ!!」

突き立てられた刃に
力がこもり、ノークスは
痛みにうめいた。

「この…!」

反対の足で地主の顔を
思い切り蹴り飛ばす。

無様にひっくり返った
地主は、痛みにう
めきながら、それでも
ノークスに向かって這いずる。
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