モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
髪の短い女は、シスターか
娼婦だけ。
この近隣の国々では女性の髪は
長くあるべき、が古くからの
習わしなのに。
なのに、姫乃はノークスから
逃れるために、躊躇なく
その長い髪を切り捨てた。
姫乃の髪を握り締めたまま、
ノークスが呆然としているうちに、
部屋のドアを開けて、姫乃は
脱兎のごとく逃げ出した。
あとに残された凍夜は、
呆然とするノークスを興味深げに見る。
たぶん、彼の人生の中でここまで
彼の思い通りにいかない女は
姫乃が初めてだったろう。
「さっき噛みつかれたばかりなのに、
キミも懲りないね。」
「…余計なお世話です。」
「キミのせいで今晩の食事は
お預けになった。」
「…。なんなんですか、あの娘は。
跳ね返りにも程がある。」
「僕はおもしろいよ。
飽きがなくていい。」
「アレをそう思うのは
貴方ぐらいです。」
そういって、ようやく
我に返ったノークスは、
恨めしそうな目で凍夜を睨んで、
握っていた髪の毛を机に置く。
ノークスの様子が正常であることを
確認した凍夜は、姫乃のあとを追って
部屋を出た。
娼婦だけ。
この近隣の国々では女性の髪は
長くあるべき、が古くからの
習わしなのに。
なのに、姫乃はノークスから
逃れるために、躊躇なく
その長い髪を切り捨てた。
姫乃の髪を握り締めたまま、
ノークスが呆然としているうちに、
部屋のドアを開けて、姫乃は
脱兎のごとく逃げ出した。
あとに残された凍夜は、
呆然とするノークスを興味深げに見る。
たぶん、彼の人生の中でここまで
彼の思い通りにいかない女は
姫乃が初めてだったろう。
「さっき噛みつかれたばかりなのに、
キミも懲りないね。」
「…余計なお世話です。」
「キミのせいで今晩の食事は
お預けになった。」
「…。なんなんですか、あの娘は。
跳ね返りにも程がある。」
「僕はおもしろいよ。
飽きがなくていい。」
「アレをそう思うのは
貴方ぐらいです。」
そういって、ようやく
我に返ったノークスは、
恨めしそうな目で凍夜を睨んで、
握っていた髪の毛を机に置く。
ノークスの様子が正常であることを
確認した凍夜は、姫乃のあとを追って
部屋を出た。