モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~

酒の肴―凍夜

ノークスの従僕からの報告で、
正気に戻った姫乃が城の外に
出ていないと知った凍夜は、
迷わず自室に足を向けた。

部屋の前に立ってドアに手を
かけると、鍵がかけられている。

神経を集中させれば、
室内に剣の姿のまま持って
行かれた従僕の気配があった。

小さくため息をこぼして、
自分の血に呼び掛ける。

室内でその姿を変えた従僕は、
カチャリと小さな音を立てて
解錠したドアを開けた。

開かれたドアの隙間から
見えたベットの下には、
部屋中のシーツや衣類を
頭からかぶって隠れて
いるつもりの姫乃が見える。

風変わりなオブジェと化した
姫乃がおもしろいので、
刺激をしない様に部屋へ
入ることにする。

簡易な棚の上に置かれた
グラスを二つ手に取り、
用意されていた二本の酒を
取り出して、姫乃に尋ねた。
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