モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~

吸血鬼の花嫁―姫乃

労わりのこもった動作で、
姫乃はベットに下ろされた。

連れてこられたのは、
凍夜の部屋だ。

凍夜にそばにいてほしいのは
もちろんだが、残された
時間を沙羅とも過ごしたい。

そう告げよう口を
開くより先に、
首筋に鋭利なモノが
押しあてられた。

「…凍夜、何を…?」

首にぴたりとついた
部分にぬくもりを感じて、
その名を呼ぶ。

「東雲…?」

姫乃の声に応えるように、
脈打つ音が聞こえた気がした。

「…凍夜。これは、
どういうつもり?」

刃物を首に押しあてられている
状況だというのに、
姫乃は穏やかな声で
凍夜に尋ねた。

凍夜は、何も答えず、
姫乃の上に覆いかぶさる
ようにして東雲を握っている。

その状態で俯いているから、
顔は、良く見えない。
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