モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~


―キミになら負けてもいい―


それは、死は負けだとういう
凍夜にとって、姫乃になら、
殺されてもいいという意味。


それはつまり。


…姫乃が死んだら、
凍夜も死を選ぶつもり…?



「…キミが死ねば、
僕は、独りになる。」

「…。一人じゃないわ。
ノークスがいるじゃない。」

「その、一人じゃない。」

言葉を探すように、
凍夜は少し黙った。

「…朔は、血の繋がった他人だ。
朔がいようがいまいが、
僕はもとから一人だ。
…でも、キミがいなく
なるのは、違う。
キミがいなくなれば、
僕は独りになる。
キミが、僕の心を
独りにする。」

「…凍夜…。」

「朔がいなくなっても、
僕はどうともならない。
でも、キミがいなくなるのは…。」

もう一度、口づけられる。

二度、三度とついばんでから、
凍夜はようやく姫乃から
顔を離した。
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