モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
「…苦しくて…たまらない。」

くしゃりと歪んだ表情の、
その苦しげな様子に、
姫乃の方が涙を
こぼしてしまう。

涙でぬれた頬を凍夜の
手が包み込むように触れた。

つらそうな顔を
見ていたくなくて、
凍夜の顔が
見えないように、
どうにか動く半身で、
彼の頭を抱き寄せる。

「わたしは…。
花嫁には、なれないわ。」

静かに、姫乃は呟いた。

「姫乃。」

「…わたしには、
重すぎるの…。」

「…。…なにが。」

「…命が。わたしには、
わたしの命だけでも重いの。
誰かの命を背負う
ことなんて、できない。」




大事な人たちが、いた。




生まれてからずっと、
そばにいて愛情を
注いでくれた人たちだった。


先立つ父に、その人たちを
守ると、約束した。



…なのに。


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