モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
「…もう、誰かの命を
背負うことなんて、
できない…。」

守るべきはずだった
人たちは、姫乃を守って、
死んでいった。

家族を亡くしたあの日、
姫乃は、自身の無力さを
思い知った。

「わたしは、わたし一人分の
命を背負うだけで…
沙羅と自分のことを
それぞれ半分ずつ
支え合うだけで、
もう、いっぱいいっぱいなの…。
あなたの命まで、
背負うなんて…
あなたの命を握る
存在になるなんて、
無理なの…。」



だから。



「だから、花嫁には、
なれない…。」

泣きじゃくって訴える
姫乃の髪を、凍夜は
優しく撫でた。

そう、とだけ呟いて
東雲を握る手に力を込める。

「…凍夜…。」

「…。…キミが死ぬのは、
見たくないな…。」

姫乃に押し当てていた
刃先を、凍夜は
自身の首に当てた。
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