モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~

逃げ場―ノークス

目が覚めるなり、少女はベットの下に転げ落ちた。

その反応はおもしろかったが、そのまま動かないので、
退屈に思いそっと近づいて声をかける。

驚く反応はなかなか面白い。

シーツを纏って、あわてて反対側のベットの
下から這い出してくる。

「おや、僕の用意した服はお気に召しませんでしたか?」

そう問いかけてみても、彼女の耳には聞こえていないようだった。

必死に、部屋の様子をうかがっている。
正確には、部屋の出口を。

獲物を追いつめる狩人はこういう気分なのだろうか。

普段なら、その整った容姿と柔らかな言動で
女性に逃げられたことのないノークスにとって、
少女の反応はとても新鮮だった。

なにより、少女の持つ「あの顔」がおびえていることが
ノークスの加虐心を刺激する。
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