モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
「飲まないの?」

塊のまま、じっとこちらの
様子をうかがっているで
あろう姫乃に声をかける。

「…キミ、まだ酒の
飲めない歳?」

「飲めるわ…。」

「そう。おもしろい味だよ。
僕はけっこう気にいった。」

姫乃の好奇心を煽るように
言って酒を掲げる。

いつの間にか朝から
降っていた雨もやみ、
雲間から差す月光に
照らされる紺碧の液体は美しく、
見た目も香りも姫乃の
好奇心を刺激するには
申し分ないだろう。

「…。」
「酒の肴に、まだキミに
教えていない僕たちの話を
してあげるよ。」

まだ、様々な葛藤と好奇心が
競い合っている姫乃に、
止めの一言を告げる。


案の定、その一言は
姫乃の好奇心を勝利に導く
見事な後押しとなった。
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