モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~

静かな悪戯―姫乃

朝日がずいぶん地平線から
離れたころ、姫乃は目を開けた。

こんな時間まで眠って
しまうなんて、と慌てたが、
隣で眠る凍夜のぬくもりに
抗えず、ベットから出られない。

夕べ、たっぷりと姫乃を
愛してくれたその身体に、
すりよる。

起きてしまうかしらと
思いながら、そっと胸板を撫で、
首筋をなぞって、頬に触れたが、
一向に起きる気配はない。

もう少し腕を伸ばして、
髪に触れようとしたが。

「…?」

視界に入った自分の腕に、
いくつもの見覚えの
ないモノを見つけた。

「…虫さされ?」

それにしてはずいぶん多い。

よくよくみると、
腕以外の場所にも見える。
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