モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
「それに、キミが今日にも
逃げ出そうとするのは
わかりきっていたしね。」

「え?…どういうこと?」

まさか、妹のことが
バレたのだろうか。

肘をついたまま酒の入った
グラスを弄んでいた凍夜が、
視線だけをこちらに向ける。

その仕草の艶っぽさに、
場をわきまえない姫乃の
心臓が少しだけ跳ねた。

「焦燥感。」

「!」

「キミの血はそういう味が混ざってる。」

「…味?」

「そう。ノークスと違って、
僕は血の味から、感情を読み取れる。
だから、ここ数日、キミが何かを
気にして、酷く焦ってるのは
わかっていた。」

それは一体どんな味なの。
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