モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
「飲まないの?」
「え、ええ…いただきます。」

再度進められて、姫乃は
グラスに口をつけた。

確かに、聞いていた通り
今まで飲んだどの酒より
クセが強い。

…でも、けっこう
おいしいかもしれない。

そう思って、もうひとくち
飲み込む。

なんとなく、この部屋で
初めて食事をした時の
ことが思い出された。

…もし、凍夜の勧めを
断ったら、また口移しで
飲まされたのかしら。

そんなことをぼんやり
考えている自分に気づいて、
姫乃は顔を赤らめた。

きっと、まだ例の麻酔とか
言うのが残っているんだわ、と
勝手な理由をつける。

グラスから視線を凍夜に戻すと、
どうやらずっと姫乃を見ていたらしく、
目があった。

不埒な考えを見透かされたような
気がして、姫乃はますます
恥ずかしくなる。
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