モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
「…酒、弱いの?もう顔が
赤くなってる。」

「え?えぇと、どうかしら。
すごく弱いってことはないと
思うけど。」

さすがに、心の中が
読まれていたわけでは
ないらしいことにほっとした
姫乃はあわてて話題を変えた。

「あの、それで、さっきの
話なんだけど…わたしの
知らない話を教えてくれるって…。」

「…。」

「あの…わたし、毎晩…。」

「…ノークスが言ったように、
僕たちは食事をとるために、
麻酔のようなものを使う。」

「…。」

「牙から注入してすぐに
全身に回る即効性で、
それが効いている間は
思考と記憶力が著しく低迷する。
効果が薄れても毎日使えば
中毒状態で日常の記憶の一部が
あいまいになるけれど、
自然に切れる前に
もう一度麻酔を注入すれば、
さっきのキミみたいに
あいまいな記憶も、
心身の自由も取り戻す。」

…だから、ここにきてから、
夜の記憶がほとんどなかったのか。

納得する反面、沸々と屈辱的な
感情がわきあがってくる。
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