モントリヒト城の吸血鬼①～ヴァンパイアの花嫁～

「マスター。」
「…追い返しなさい。
会うつもりはない。」

凍夜がそばにいなければ、
何かのはずみで自制が
きかなくなった自分は
彼女に危害を加えてしまうだろう。

それだけは避けなければならない。

ノークスの言葉を伝えに、
部屋を出る従僕を見ながら、
ノークスは微かに苛立った。

もともと、女に甘いと評される
ノークスとしては、もう二度と
昨日のようなか弱い女に暴力を
ふるうなどという最低なマネは
したくないのだ。

昨日は凍夜のおかげで何とか
押しとどまったというのに、
今日になって姫乃を一人で
ここに寄こすなど、
凍夜は一体何を考えているのか。