小さな恋の虹〜キミと描く夢〜
「この風の中どこに行こうっていうの? もうすぐ昼ごはん出来るから、テーブル拭いてきなさい!」
「違うの!! 圭がケガしたって、良ちゃんから電話がかかってきたの!」
話をわかってくれないお母さんにイライラして、怒鳴るように言う。
「圭のケガ酷いって。今病院にいるって!!」
強くお母さんの腕を揺らして、「お願いだから早く車出してよ!」とかなぎり声で叫んだ。
焦りが強まり、唇を噛みしめると頬に涙が伝う。
パニック状態のあたしを見てお母さんは目を丸め、一旦フライパンの火を消した。
「そんなに酷いケガなの?」
あたしは深く頷きながら、頬に伝う涙を拭う。
「どこの病院?」
お母さんに聞かれハッとする。
そうだ。あたし、どこの病院か聞いてない。
「まぁ、運ばれるとしたら海岸沿いのあの病院だと思うけど、距離が近くてもこの風だと危険すぎるしね……」
心配そうに言うお母さんは、タオルで手を拭いてから、テレビのチャンネルをニュースに合わせる。
ちょうど、港前からアナウンサーが中継をしていた。