小さな恋の虹〜キミと描く夢〜
クイクイっと良ちゃんの袖を引っ張ってみると、良ちゃんはクルリとあたしに顔を向け、いつもの笑顔になる。
「花火、楽しみだね!」
暗がりの中、良ちゃんの笑顔がぼんやり浮かんで見えた。
空の、グレーと紺と紫が混ざったような不気味な色のせい?
まだ暗くなりきらない中途半端なこの暗さが、良ちゃんの笑顔を切なく映した。
――ドーン!!
一発目の花火が上がり、音に反応したあたし達は、海を背にして神社の方を振り返る。
薄暗い空に、色とりどりの花が艶やかに咲き誇り、あたし達の顔をキラキラと光らせた。
うわ……! すごくキレイ……。
何発も何発も、大きさや色を変えて夜空に打ち上げられる花火。
あたしは、毎年良ちゃんと圭と3人でこの花火を見上げていた。
夏休みの一番の思い出と言えば、この夏祭りだった。
毎年当たり前のように見ていたけど、来年はどうなんだろう。
みんなでこうやって花火を見上げるのは、今年が最後だったりするのかな……。
あたし達は、みんなで横一列に並んで花火を見上げ、拍手をしたり、変わった形の花火が上がると指を差して笑ったりした。