小さな恋の虹〜キミと描く夢〜
「驚いた。ごめんね、気づかなくて。もしかして何度も呼んだ?」
おばさんは肩に羽織るカーディガンを手で押さえながらあたしに歩み寄り、申し訳なさそうに顔を歪めた。
「いえ。一回声かけたけど、物音がなかったので留守だと思って」
あたしはそう言って、玄関に置いた浴衣を持ち上げた。
「よかったです、直接返せて。浴衣、ありがとうございました」
「あら、クリーニングに出してくれたの? わざわざよかったのに」
クリーニングの袋に入った浴衣を見て、おばさんが言った。
「あたしすごい汗かいちゃったし、借りたものはキレイにして返さないと」
あたしが言うと、おばさんは「ありがとう」と微笑んだ。
ん? 何だか、いつもと雰囲気が違う気が……。
……おばさん、何か、辛いのかな……。
微笑んだ顔に、全然力が入ってない気がする。
それに、少し寒そうだし……。