小さな恋の虹〜キミと描く夢〜


昨日、おばさんから熱が上がるかもって聞いた時、早く圭を呼びに行くべきだったんだ。


そうしたら早く対処できて、肺炎にならずに済んだのかもしれない。


圭の家を訪ねておきながら、おばさんをひとり残してあのまま帰るなんて……。


あたしのせいだ!


――ガタン!


あたしは授業どころじゃなくなり、勢いよく席を立った。


病院に行って、おばさんの姿を見たい。


おばさんの声を聞いて、安心したい!


席を立って教室を走り出ようとしたら、突然良ちゃんに手首を掴まれた。


椅子に座ったままあたしの手首を掴む良ちゃんを見下ろす。


「ダメだよ」


良ちゃんは奥二重の目をキュっと細め、眉間に力を入れて鋭い視線であたしを見る。


「行ったらダメだ」



< 158 / 495 >

この作品をシェア

pagetop