小さな恋の虹〜キミと描く夢〜


「今、結構落ち着いてる」


圭の小声がかすれている。


狭い個室に15人が集まり、空気が一気に熱くなった。


「熱も下がったし、しばらく入院して様子をみて、問題なければ退院できるって」


圭が言うと、心配で強張っていたみんなの表情に笑みが戻っていく。


「よかった」


大きく息を吐いて言うと、圭が呆れたようにフッと笑った。


「変わんねぇな、おまえ」


ポケットに両手を突っ込み、下を向きながらクククっと笑う圭。


……う。そんなに笑わなくてもいいじゃん。


その辺は自分でもよくわかってるよ。


変わってないのは、あたしだけだって。


どうせあたしは、パニックになると周りが見えなくなって、突っ走って事故るタイプですよーだ。


あたしは、声を押さえて笑い続ける圭を睨みつけ、口を尖らせる。


「でもまぁ、心配してくれてありがとな」


ふて腐れるあたしに、圭が優しく微笑みながら言った。




< 162 / 495 >

この作品をシェア

pagetop