小さな恋の虹〜キミと描く夢〜
「さぁさぁ、お待たせ。あなた達が着るのはこれですよ」
おじいさんは、小さな部屋から段ボールを抱えてきて、あたし達の足元にドスンと下ろした。
「うわ! 近くで見たら気味悪いね、これ」
段ボールの中から鬼の面を取り出した良ちゃんが、顔を歪めながら真っ赤な鬼と睨めっこしている。
「こんなの付けて踊って、なんか意味あるのかな?」
睨めっこを続け鬼に負けた良ちゃんは、そーっと面を段ボールの中に戻しながら言った。
「キミらの先輩たちも最初は同じことを言っていたよ」
おじいさんが、顔中のシワをダランと下に垂らして笑う。
「でも、本番を終わらせてもう一度この面と向き合ってみると、この厳つい面の表情が少し和らいで見えるんだ」
「えー? そんなことってあるんですか?」
あたしも、良ちゃんのように鬼の面を手に取ってみる。
だけど、どこからどう見ても不気味で、これが柔らかくなるなんて到底思えなかった。
「練習を積み重ねて行ったら、キミらもきっとわかるはずだよ? みーんな、そうだから」