小さな恋の虹〜キミと描く夢〜
「う……。なに、これ……」
鬼の面を付けてみると、小さな目の穴からは前が見づらいし、付けてみると結構重いしで動きづらい。
それに……面の匂いが何とも……。
汗の匂いというか、カビの匂いというか。
「舞台に上がるのに階段があるよね? これ付けてたんじゃ、あたし完全にこけるよ」
あたしが面を一旦外しながら言うと、あたしの背後で圭がフンと鼻で笑った。
「本番でこけたら、歌恋の未来が心配だな」
圭の発言にムっとして後ろを振り向き、何か言い返してやろうと思った。
だけど……振り向いた瞬間、思わず言葉を飲み込んでしまった。
だって……制服の上から羽織った真っ赤な着物が、似合いすぎてるんだもん。