小さな恋の虹〜キミと描く夢〜
まだまだ生ぬるい風だけど、夕方になると少しずつ暑さも和らいでいるような気がした。
良ちゃんのフワフワの黒髪が、荒れる風に遊ばれてボサボサになっている。
傘をさしているのに雨が横から入ってきて、あたしのグレーのスカートと、良ちゃんのズボンを濡らした。
「パチパチあめ、圭に買って行こうか」
急に、良ちゃんの声が真剣になった。
あたしは傘を少し持ち上げ、良ちゃんを見る。
「明日、学校来たら、久しぶりに圭に食べさせようよ」
あたしの視線に気づいたのか、良ちゃんはあたしを見て微笑んだ。
あたしは大きく頷き、わざと傘を傾け良ちゃんに水滴を飛ばす。
「うわっ!」と悲鳴を上げた良ちゃんは、仕返しにと、あたしにも水滴を飛ばしてくる。
ケラケラ笑う良ちゃんは前を向きなおし、前髪についた水滴を首を振って払っていた。
良ちゃん……。
あたしにアイスを買いに行こうって言ったのは口実で、本当の目的はパちパチあめを買うことだったんだね。
あの時は海がいたから、わざと“アイスを買いに行こう”って言ったんだ。
海に、変な心配をかけさせないように。
明日、圭、来るよね……?