小さな恋の虹〜キミと描く夢〜
失われた命
その後、圭と良ちゃんは、同じ教室にいるのに全く言葉を交わさなかった。
授業中も、ふたりの間に挟まれて座るあたしは、横目で両隣の様子をうかがう。
だけど、圭は窓の外を見てるし、良ちゃんは黙々と黒板の文字をノートに書き写しているしで、どんよりと空気が重かった。
お互い、本気で避け合ってるんじゃない。
良ちゃんが、変な意地を張ってるだけだ。
きっと、圭もそれに気づいてると思うし……。
あたし達には、こんな事をしている暇なんてないのに。
板挟みのあたしは、どうしたらいいんだろう。
「あっ! 圭! 今日も病院?」
放課後になってすぐに席を立った圭に慌てて聞いた。
スクールバックを肩に提げて一旦あたしを振り返った圭は、少し口元に笑みを浮かべ、良ちゃんの背中に目を向けた。
良ちゃんは圭を振り返ることなく、スクールバックに教科書を詰めている。