小さな恋の虹〜キミと描く夢〜
あたしは、部屋着のまま家を出た。
歩く足には力が入らず、フラフラと頼りなく歩みを進める。
海岸の方から聞こえる安定した波の音が、あたしの心を洗い流していき、感情までも奪っていった。
あ……そうだ……。
あたし、良ちゃんに連絡入れてない……。
信じがたい知らせに頭が真っ白になる中、ズボンのポケットをまさぐって、失笑する。
「あたし……携帯忘れてるし……」
病院に着き、おばさんのいる病室に向かう。
だけど……病室の中はキレイに片付けがされていて空っぽだった。
白いカーテンが開けられた窓から、水色の空が見え、飛行機がおしりから白い線を出してゆっくり飛んでいる。
……わけがわからなかった。
ああ、そうか……病室を間違えたんだ。
病室の横の名札を見てみても、白紙のままで患者の名前が書かれていない。