小さな恋の虹〜キミと描く夢〜
ほら……あたし、病室を間違えてる……。
ハッと小さく笑い、隣の病室へ向かう。
その時……。
前方から、稔くんとおじさんが歩いてきた。
ピタリと、足を止める。
泣き崩れまともに歩けない稔くんをおじさんが支え、こちらに向かって歩いてきている。
その後ろには……いつもと変わらず、クールに両手をポケットに突っ込む圭がいた。
「あ……歌恋ちゃん……」
おじさんの言葉で、圭の目があたしに向く。
少しだけ目が合うと、圭はすぐにフイっと視線を逸らした。
稔くんが、泣いてる。
おじさんの目も、真っ赤に充血している。
圭だけが、普通だ……。
「おじさん……お見舞いに来たのに、おばさんがいないんです」
言いながら、鼻の奥がツンと痛くなる。
徐々に眉間がけいれんしてきて、ジワリ、ジワリと、目の前が歪んでいく。