小さな恋の虹〜キミと描く夢〜
「……歌恋」
しゃがみ込んで嗚咽をこぼすあたしの肩に、良ちゃんがそっと手を置いた。
良ちゃんはしっかりあたしの両肩を支え、ゆっくり立たせてくれる。
足に力が入らず、殆どの体重を良ちゃんに預けフラフラと立ち上がった。
良ちゃんの胸に顔を埋めて、声を上げて泣く。
喉が痛くなり、息を吸うタイミングもわからなくなる。
肩が不規則に上下して、酸素不足の頭がもうろうとした。
あたしを支える良ちゃんは、一言も言葉を発することなく、あたしの肩を撫で続けてくれる。
人の死を経験したのは、生まれて初めてだった。
大切な人がこの世を去る喪失感。
まだ姿はそこにあるのに、温もりはなく。
笑顔は浮かぶのに、触れることはできなくて。
過去の言葉が耳の奥で交わされるけど、そこから新しい会話は生まれない……。
全てが、目の前から消えていく。
おばさんは、もう、いない……。
これが、“死”なんだ……。