小さな恋の虹〜キミと描く夢〜


「ボーっと突っ立ってないで、早く手を動かして!」


校舎の前に立つガジュマルの木の下を、掃除中幸せに浸っていたあたしに、真面目に掃除をしていた良ちゃんがキレた。


目を吊り上げる良ちゃんが、“ほらほら”と竹ぼうきであたしを追いやりながら急かす。


今は、文化祭前の校内清掃中だ。


全校生徒の人数が少なくて普段出来ない場所を、5,6時間目を使って大掃除をしている。


あたし達の文化祭は毎年11月に行われ、他の学校とはちょっと違うんだ。


人数が少ない分、出来ることが限られてしまうんだ。


全校生徒で力を合わせて何かを準備して、当日に家族や友人を体育館に呼んで披露する。


今年の出し物を15人で話し合い、今回は、この学校の卒業生を呼んで閉校前にパーティーをすることになった。


体育館をパーティー用に派手に飾り付けをし、15人で作った料理で卒業生をもてなし、ゲームをする予定。


4日後に迫った文化祭の為、それぞれ学年に別れ決められた掃除場所をキレイにする。


あたし達3年は、校舎前のガジュマルの木の周りだ。


暖かなこの島にも、ようやく秋が訪れ過ごしやすい気候になってきた。


ガジュマルの木も、汗ばむ季節を乗り越え、涼しい風に喜びながら葉を揺らしている。


掃除はあまり好きじゃないけど、ブラックな良ちゃんが現れると怖いからな。


真面目にやるか。


あたしは、竹ぼうきを引きずりながら落ち葉をめがけて歩く。


「あーっ!! 歌恋! 何やってんのバカー!」


あたしの前で、落ち葉をごみ袋に入れていた良ちゃんが、あたしを指差し大声を上げた。


「後ろ後ろっ!!」


良ちゃんがプンプン怒ってあたしの後ろを大きく指差すので、クルリと振り返ってみる……。


「あ……」



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