小さな恋の虹〜キミと描く夢〜


83年間続いたこの学校の卒業生は、全部で710人。


その中で、今でも確実に住所がわかっているのは100人くらいだ。


あとの人は島を出てしまい、何県に住んでいるのかわからない。


「でも、せっかくなんだし、島に残ってる卒業生には出来るだけ来てほしいよね」


「そうだね。今年で最後だから、文化祭の日は母校でたくさんのことを思い出して懐かしんでほしいよね」


良ちゃんと言いながら、ちょっとしんみりした空気になる。


今では15人になってしまったけど、昔はそれなりに生徒数は多かったんだよね。


休み時間には賑やかな声が響いて、大勢で体育祭や文化祭を楽しんでさ。


放課後になれば静かになる廊下も、きっと前は生徒の笑い声や話し声でザワザワしていたんだと思う。


「ねぇ、歌恋、知ってる?」


良ちゃんが招待状に住所を書きながら聞いてきた。


あたしも、書く手を止めずに下を向いたまま「ん?」と答える。




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