小さな恋の虹〜キミと描く夢〜
……条件とタイミング?
良ちゃんは、「いい? よく聞いて?」と人差し指を立てた。
「当日は雨が降っていること。そして、雨が上がりそうな時間を見計らって木の下に行く」
「うんうん」
「雲間から現れはじめた青空を見上げて、そこに虹がかかっていれば、目を閉じて好きな人の名前と自分の願いを声に出して呟くんだ」
虹を見上げて、好きな人の名前と願いを呟く……。
なんてロマンチックなの。
「ここで大事なのは、その場面を誰にも見られないこと」
「え?」
誰にも見られないことって、それ不可能じゃない?
ただでさえガジュマルの木は目立つし、体育館からだって見えるのに。
ロマンチックで素敵だと思ったけど……。
「それ、難しそうだね。そもそも、当日に雨が降ってて、さらにそのあと晴れるなんて、そんな都合のいいことなんてないでしょ。ましてや雨上がりに虹が出るなんて」
あたしは「ないない」と、顔の前で手を振ってハハっと笑った。