小さな恋の虹〜キミと描く夢〜
「歌恋ちゃんってほんっと不器用だよね」
デジカメを覗き込む海が、嫌味を言いながら口元をニヤケさせる。
「わかってるんなら、こんなところ撮らないで!」
包丁をまな板の上に置いて、海に向かって吠える。
「うわっ! 水飛んだ! ちゃんと手を拭いてよ! カメラが壊れるじゃん!」
「だったら、こんなところにカメラなんて持ち込まないでくださ~い。撮るのは当日だけでいいじゃん。カメラちょっと貸しなさい!」
もう撮られないように、海を追い掛ける。
条件反射であたしから逃げ出した海だったけど、すぐにあたしに捕まり大人しくなった。
「歌恋ちゃんはわかってないな~。こういう準備中が一番思い出に残るのに」
海はそう言って、さっき撮ったあたしのジャガイモを剥く姿を画面に映した。