小さな恋の虹〜キミと描く夢〜
「ひとりで家庭科室から抜け出して何してたの?」
あたしが聞くと、圭はまた前かがみになり顔をあたしに向け夕日に眉を寄せた。
その目線にドキリとして、サッと圭から目を逸らす。
「俺がいても何にも出来ることはないし、ちょっと考え事をしにここに来たんだよ」
「考え事?」
あたしが聞くと、圭は大きく息を吐きながら体を起こした。
「将来のことについて、ちょっとな」
……将来の、こと?
また大きな考え事だね。
「最近、すごい悩んでてさ」
「…………」
「俺の将来の夢は医者になることで、でも、母さんが大事にしてきたあの店を閉めることはしたくなくてさ」
……圭。
「店は父さんがどうにかするって言ってたけど、父さんには父さんの仕事があるし。それに、父さんが今の仕事を辞めたら、俺達が困るしな」
圭はベンチの背もたれに体をのけ反らせ、グーっと茜色の空を見上げた。
圭の前髪が風に流され、おでこが丸見えになる。
空を見る圭の顎のラインと、首筋が美しすぎてまた心臓が暴れ出す。