小さな恋の虹〜キミと描く夢〜
「昨日ね、考えてたの。あたしは、どうして島を出て大学に進もうとしてるのかって」
「歌恋がそんなこと考えたの? ひとりで? 珍しい事もあるんだね」
良ちゃんが目を丸める。
あたしは、良ちゃんの失礼な反応に口の端を引きつらせたけど、話を聞いてもらう為に咳払いをして気持ちを入れ替えた。
「あたしさ、どんなに考えても全然理由が見つからなかったの。先輩達も殆どが島を出て行ったから、あたしも真似をして出るのか、それとも、島を出て都会に行きたいだけなのかって」
「…………」
「多分、一番の理由は、先輩たちの真似だと思うんだよね」
あたしが苦笑すると、良ちゃんは腕を組んで大きく息を吐いた。
「そう言われれば、僕もそうかもしれない。島を出る理由なんて考えたことなかったな~。僕も多分歌恋と一緒だよ。
先輩達の真似だと思う。将来だって、みんながサラリーマンになるから、サラリーマンって、安易に考えてたし」
良ちゃんは細かく頷きながら何かを考え始めた。