小さな恋の虹〜キミと描く夢〜
「くっそー!」
走りながら険しい顔をした海が、最後の力を振り絞り叫んでいる。
たったひとりの女子、梓ちゃんが、男子顔負けの速さで海を抜き1位になったんだ。
165センチの長身で脚の長い梓ちゃんは、他の子より足の回転は少ないのにグングン差を付け、黒髪のポニーテルを揺らして走っていた。
足の速さは誰にも負けないと豪語する海だけど、気を抜いている間に梓ちゃんが力を付けてきたみたい。
いつも子犬のように可愛い海は、新たなライバル出現に、競争心丸出しで頑張っていた。
しかし……。
「惜しかったね、海」
2位でゴールを切ってすぐに芝生の上に寝そべった海に駆け寄り、良ちゃんが少しからかうように言った。
腕で目を覆って仰向けで倒れている海の体に、あたしと圭と良ちゃんの覗き込む影が映る。
「あ~! 悔しいっ!」