小さな恋の虹〜キミと描く夢〜
「きゃっ!!」
また、背中に水がかかった。
腕で体をかばって振り返ると、また圭が、ホースをあたしに向け放水していた。
それを、すぐに空に向ける。
「歌恋!
また虹出来たぞ! いいのか、もう1回願い掛けとかなくて!」
自分で作り出した偽物の虹を顎で指した圭は、あたしを見てクククと笑った。
あたしはムスっと圭を睨みつけ、はかない虹を見上げる。
まぁ、いいか。
偽物でも、どんなにはかなくても……
あたしは、目を閉じて空を見上げもう一度、“圭とずっとずっと一緒にいられますように”と虹に願いをかけた。
風に飛ばされた霧が、あたしの顔を少しだけ濡らし、汗ばんだ肌が喜んでいた。
「俺も、願っとこうかな」
水を止めた圭が、あたしの隣に来て青空をグッと見上げる。
もう虹は消えていたけど、圭は口元に笑みを作りながら目を閉じていた。
圭の前髪についている水滴が、太陽の日差しに反射してキラキラ輝いている。
水も滴るいい男……
「何をお願いしたの?」
あたしが聞くと、圭はいつものクールな顔に戻りあたしを見下ろした。
「秘密」
「えー? なんで?」
圭の腕を掴んで『教えてよ!』と激しく揺らすと、圭は突然腰をグッと折ってあたしの顔を覗き込んできた。
強く鼓動を打った心臓が、あたしの全細胞を震わせる。
「教えない」
「うっ……」
圭はあたしの鼻をムニュっとつまみ、まぶしい笑顔を作った。