小さな恋の虹〜キミと描く夢〜
あたしは、圭につままれた鼻に手を当て、上目づかいで圭を見上げる。
「そろそろ戻るぞ、歌恋。
海が最後に集合写真撮るってよ」
結局圭は何を願ったのか教えてくれず、両手をポケットに突っ込んで先に歩いて行った。
どうして教えてくれないの?
圭のケチ!!
まぁ、いいや。
そんなことより……
あたしは、走って圭を追い越して振り返った。
圭のウエイター姿なんてもう二度と見れないと思うので、あたしは海のデジカメのように、ウエイター姿の圭を瞳に映して何度も瞬きをした。
貴重な姿を、頭のフィルムに刻むために。
そんなあたしを見て、圭が迷惑そうに片方の眉を下に下げる。
「キモイからやめろ」
あたしは嫌だと首を横に振る。
すると圭が、歩きながらあたしの顔を覗き込んできた。
「ハハっ。
鼻、真っ赤になってるし」
圭がからかってあたしの鼻を指す。
「圭がやったんじゃ~ん」
「もっかいつまんでやろうか」
「やめてっ!!」
「ハっ。
冗談だし」
圭とじゃれ合いながら体育館に向かった。
あたしの願いと、圭の願いを聞いてくれた
小さなはかない虹を、背後に残しながら。