小さな恋の虹〜キミと描く夢〜


「はいはい! 明日から気をつけまーす」


お母さんに適当に答えながら玄関で靴を履く。


「お母さんはそのセリフを18年間聞き続けてきたんですけどね」


腰に手を当てながら皮肉に言うお母さんをクルリと振り返り、イーっと歯を見せこう言い返した。


「生まれた時は言ってませ~ん」


呆れてため息をつくお母さんに、ヘヘンと笑って見せ「行ってきます!」と家を出る。


門の前には、毎朝自転車で迎えに来てくれる幼なじみの良ちゃんが、腕時計を見ながら何やらぶつくさ言っていた。


良ちゃんのツヤツヤの黒髪が朝日に光り、潮風に揺られあちこちに揺れている。


眩しそうに鼻のスジにシワを寄せて目を細める良ちゃんの目は、奥二重でただでさえ細いのに余計細く見えた。


「う~ん。
今日は昨日より23秒遅かったな」


「フーンだ」



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