小さな恋の虹〜キミと描く夢〜


「海~っ!!!!」


声の限り叫ぶ。


見送りの人に隠れないように、必死で背伸びをしながら。


「海~っ!!!!」

「海~っ!! 聞こえないの~っ!?」

「海のバカっ!!
最後にあいさつなしとか、許さないからねっ!!」


口に手を当て、喉が裂けるくらいの大声を出すみんな。


どんどん遠ざかる船は、進行方向を変え外に出て行こうとする。


「気づけ~!! 海~っ!!」


ルナちゃんが涙声で叫んだ。


その直後。


船の中から、大きく目を丸めた海がゆっくりと出てきた。


みんな海の姿を確認すると、両手を大きく左右に振る。


「………」


海の口が小さく動き、何かを言っている。


だけど、周りのざわつきで何を言っているのかわからなかった。


海はぐっと俯き、前髪を押さえる。


あたしの瞳に、ジワリと涙が浮かんだ。


海が、泣いてる。




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