小さな恋の虹〜キミと描く夢〜


「良ちゃん……」


あたしは、体育館へ向かって歩いて行く良ちゃんを呼びとめた。


クルリと振り返る良ちゃん。


口元は笑っているけど、やっぱり眉間に力が入っている。


「最近、どうしたの?
何か我慢してる……?」


あたしが聞くと、良ちゃんは口元から笑みを消し、奥二重の目に力を入れてあたしを見据えた。


その鋭い眼差しに、身動きが取れなくなる。


「そういうところは鈍感じゃないよね、歌恋って」


目とは対照的な、柔らかな声。


良ちゃんは言った後に、眉をハの字に垂らし切なく微笑んだ。


「話せるようになったら話すから」


それだけ言って、また体育館へ向け歩き出した。


話せるようになったら……


今はまだ、言えないようなことなの?


話せるようになるには、どのくらいの時間が必要?


聞きたいけど……


良ちゃんの“話せる時”が来るまで、待つしかないのかな……




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