小さな恋の虹〜キミと描く夢〜
卒業&閉校
卒業式前日。
圭が何の連絡もなしに、あたしの家にやってきた。
来る時はアポ取ってくんなきゃ困るって、この前も言ったのに……
だって……どうでもいい部屋着のまま彼氏を迎えたくないじゃん?
まぁ、今更って感じだけど……
「歌恋、上着羽織ってこい」
玄関の前で、黒いダウンを着た圭が寒さに身を縮めながら言った。
「どっか行くの?」
「散歩」
「散歩?」
あたしが眉を寄せると、鼻を人差し指でさすった圭が
「散歩という名のデート」
と、耳を赤く染めた。
あたしはドキリとして、勢いよくリビングのドアに目を向ける。
こんな会話、お母さん達に聞かれたら恥ずかしくて生きていけない。
「ちょっと待ってて!」