小さな恋の虹〜キミと描く夢〜
あたしは階段を駆け上り、ベージュのワッフルコートと赤いマフラーを付け、再び階段を駆け降りた。
「そんな慌てなくてもいいのに」
ドンガラガッシャンと慌ただしく準備するあたしを見て、圭が苦笑する。
「だって、恥ずかしいじゃん」
玄関を出て圭に言うと、圭は意味がわからないといった風に顎を突き出した。
「お父さんとお母さんはまだ知らないから。
あたし達が付き合いだしたこと」
小さな声でブツブツ言うと、圭はハっと大きく息を吐いて笑った。
「まぁ……確かに恥ずかしいわな」
圭は空を見上げながら後頭部をかく。
圭の鼻のてっぺんが寒さで赤くなっていて、何だか可愛い。
ギュッ……
空を見上げる圭の顔に気を取られていると、いきなり圭があたしの手を握ってきた。
驚いて手に目を向けてからまた圭の顔を見ると、圭はプイっとそっぽを向いた。
圭は、握った手をそっと自分のダウンのポケットの中にしまう。
その瞬間、繋がれた左手だけとても温かくなった。