小さな恋の虹〜キミと描く夢〜


あたしは、目を開けて圭と良ちゃんを見た。


いつもよりしっかり制服を着る2人が、一気に真面目になったように感じる。


良ちゃんが手をサッと前に出したので、あたしと圭は良ちゃんの手の上に自分たちの手を合わせた。


3人で円陣を組み、その後に強く手を握り合う。


『卒業生入場』


体育館からの進行に合わせ、担任の後ろについて圭・あたし・良ちゃんの順に一列に歩く。


たくさん集まってくれた人達の中心を歩くのは、とても緊張した。


途中で、カメラを手に持ったお母さんとお父さんに手を振られ、恥ずかしさのあまり目を逸らしてしまう。


あたしの両親の前には、圭のお父さんがおばさんの写真を持って座っていた。


写真の中のおばさんは、泣きそうな笑顔でこちらを見ている。

きっと、あたし達の卒業を祝福してくれているに違いない。


大きな拍手に包まれ入場を終えたあたし達は、前に3つだけ用意されたパイプ椅子の前に立つ。


挨拶を終え、スピーカーからカノンが流れ出すと、急に鼻の奥がツンと痛くなってきた。


この音楽には弱いんだよね。


今までの思い出達が、一気に大きな波となって襲ってくるから。


泣くのは、まだ早いのに……




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