小さな恋の虹〜キミと描く夢〜
カメラの前でピースをして去っていく男子に、カメラを向けられ慌てて髪型を整える女子に。
昔も今も、どの時代も。
制服が少しずつ変わっていようとも、生徒のとる行動だけは全然変わっていなかった。
最後にあたし達15人の姿が映し出されると、やっぱりカメラに映りたがってピースをする人がいた。
“83年間、ありがとう”
この言葉でしめられた映像が終わると、体育館の後ろの方からたくさんのすすり泣く声が聞こえてきた。
最後は、80名で歌う校歌。
ワっと、体育館からあふれ出る歌声は、何年振りくらいなんだろう。
島中に響いているんじゃないかと思うほど、80名の歌声は力強かった。
この校歌は、もう歌い継がれることはない。
けれど、あたし達卒業生の心の中から消えるわけじゃないんだ。
泣いているのは、あたし達だけはない気がした。
この体育館も、もう古くなった校舎も、ガジュマルの木も。
たくさんの思い出を思い出して、涙を流しているように思えたの。
83年間、お疲れ様でした。
ずっとずっとあたし達を見守ってきてくれて、ありがとう。
この島に生まれ、この学校を卒業できたことは
あたしの誇りだ……。