小さな恋の虹〜キミと描く夢〜


出発当日。


あたしは、物が少なくなった自分の部屋を見渡した。


荷物は先に福岡に送ったんだけど、物がなくなると、あたしの部屋って結構広かったんだ。


「今頃気づくとか、めっちゃ遅いし」


誰もいない部屋で、ひとりごとを呟く。


とうとう、出発の日……か。


ほんっと、何かあっという間だったな。


あたしは、圭から貰った星の砂のビンを眺める。


この勢いで、圭と離れ離れの1年が過ぎてくれればいいんだけどな……


あたしはビンをグッと握りしめ、大きな鞄を抱えながら静かに階段を下りた。


すると、リビングから覗いていたお母さんがあり得ないという表情をしている。


「どうしたの、あんた。
静かに階段を下りてくるなんて」


今までのあたしは、階段を下りる度に静かに下りろとお母さんに怒られていた。


だけど、今日は最後だ。


最後くらい、怒られずに家を出ないとね。



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