小さな恋の虹〜キミと描く夢〜
その瞬間、バランスを崩した自転車。
「うわっ!」
慌てて圭の肩をガッシリ掴むと、圭は自転車のバランスを取りながら言った。
「おまえ、バカか。ちゃんと真っ直ぐ立っとけ」
「ご、ごめん」
圭の肩を掴む手に、微かに力を込める。
襟足の長い圭の後ろ髪が、時々手に触れてくすぐったかった。
今日は、天国のような地獄のような時間だった。
だって、教室にはあたしと圭のふたりしかいないから。
授業中はいいけれど、休み時間になったら何をしたらいいのかわからない。
たまに中学生や隣のクラスから海が遊びに来たりするけど、それ以外の時間は、ひたすら無言。
圭は携帯をいじっているか、机に伏せて眠っているか。
あたしは、2階のこの教室から遠くの海を眺めているだけ。
いつも、どうやって休み時間を過ごしていたっけ?